私は少しでも役に立ちたかった

「貧しい人々と付き合い、苦しい暮らしを目の当たりにしても、不思議なことに、自分とのあまりの違いに動揺することも、哀れむ気持ちもなかった」

「哀れみなどというのは、人間が抱く感情の中で最低なものではないだろうか。弱い雨の降るある日のこと、私はリオから車で二時間ほど山の中を走っていた」

「街を抜けたところで、何かの看板を見て私は車を止めた。すると、道端に一人の男が横たわっているのが見える。酒に酔っているようで、息をしていないようにも見えたが、彼はそこで眠っているだけだった」

「寒かったので、何かないかと車の中から毛布を一枚出して、そっとそれを男にかけて私は立ち去った。男は一度もこちらを見なかったし、誰かがそんなことをしたのにも気づかない。私は少しでも役に立ちたかった」

「哀れみではなく、ただ助けたかっただけだ。人を哀れむ感情は、下品で汚いものだ。高いところから人を見下ろして、『かわいそうなやつだ』という気持ちで情けをかける人間こそが惨めなのだ」
byヒクソン・グレイシー


