「今のノーホールズ・バードを広く見渡してみて欲しい。トーナメントでトップに立つ選手のテクニックには皆、柔術が組み込まれているじゃないか。それは誰もが柔術の技術の有効性を認めたということだよ」

「マーク・ケアーだって、イゴール・ボブチャンチンだって、桜庭和志だって柔術のテクニックを取り入れている。そうじゃなければ戦いには勝てないんだ。私は追いつめられたとは、これっぽっちも思ってはいない。むしろ柔術のテクニックの有効性が証明されたのだと思っている」

「例えばこう言えばわかりやすい。砂漠の真ん中で、私がいくつかのバケツに水を持っていたとしよう。そこで喉が渇いて、いまにも死にそうになっている人と出会うとする。彼はコップ一杯だけでいいから水をくれと私に懇願するだろう。私は彼に水をあげようと思う」

「でも、その一杯の水で彼が元気を取り戻したとする。そこは砂漠だ。元気を取り戻した男は、もしかしたら、残りの水を得るために、眠っている私を殺して残りの水を取り上げようとするかもしれない。実は非常に危険なシチュエーションなんだ。それでも私は、水をあげようと思う。彼とともに生き延びようと思う」

「柔術のテクニックは我々は隠し通すことだってできたんだ。でもアカデミーを開き、多くの異なった競技者にもテクニックを授けた。UFCの後にはホイスに敗れたキモも、ダニエル・スバーンもアカデミーにやって来たよ。我々は、皆に強くなるためのテクニックを与えたんだ」

「それがグレイシーの生き方だ。それで良かったと思っている。もはや、競技間の戦いは存在しない。個々の戦いなんだ。マーク・ケアーが勝とうと桜庭が勝とうと、それらは、すべて柔術の勝利だ」
byホリオン・グレイシー