「私は人生で大切なものをいくつか失った。中でも一番辛かったのは、長男がこの世を去ったことだ。それまでの私は、自分が本当に何かを失うということが分かっていなかったのだ。試合で負けることはいつも想像していたことで、それは耐えられる。仕事を失うこと、財産や家を失うことは、それほど深刻な問題ではなかった」

「無敗の記録については、たとえ一回負けたとしても、四百戦一敗になるだけの話だ。たしかに、悲しいだろうし腹も立つだろうが、結局は相手が自分より強かったというだけのことで、受け入れるしかない。もし家が燃えてしまったら、それはひどく残念だが、別の家を探そう。そんなものをいくら失っても、それは表面的なことにすぎない」

「実際には、家を失ったことも、試合で負けたこともないが、どちらも想像はできた。それらは、いつでも起こりうることだからだ。息子は十八歳でこの世を去った。そして私は自分を見失った。それは長い人生の中の一瞬、ほんの一ヶ月ほどの短い間のことで、自分でも何が起こったのか分からなかった」

「たとえばの話だが、息子や母親など、身内を亡くしたばかりの人が私を訪ねてきたら、もちろん私はその人を抱きしめて、こう言うだろう。『本当に気の毒なことだった。でも気をしっかり持つんだ。こういうことは、誰にでも起こることだ。それでも生きていくしかない。がんばってくれ。本当に気の毒なことだった』」

「大切な誰かを亡くした人に対して、私は心からそう思っていた。ところが、逆の立場になってみると、苦しみの中に沈み込むしかないように思た。腕を失った人が、何もなかったふりをすることはできないのと同じだ。二度と普通の暮らしはできなくなる。前向きに考えることなどできない。そんなときは、失ったことを感じるしかない」
byヒクソン・グレイシー