「以前からホリオンはグレイシーの統率に苦慮していたが、このあとのほうが大変だった。アメリカにグレイシー以外の柔術家たちが大挙して押し寄せてきたからだ」
「その結果、彼らはグレイシー柔術のいい面、悪い面、そして醜いところをあぶり出していくことになる、以来、アメリカへ飛んできたブラジル人柔術家たちに、不思議な現象が起こった」
「ブラジル国内で授与された各人の帯の色が、魔法のように一夜にして変わったのだ。青帯から茶帯へ、ひどいときは紫帯から黒帯に生まれ変わる者も現れた。盲人の国では片目の男が王になる、ということか」
「UFCのプロモーターが第一回大会を″人間闘鶏〟と誇大宣伝したおかげで、真剣勝負がどういうものか全然わかっていないプロレスファンが引き寄せられてきた。たとえば、同大会では試合がグラウンドに持ち込まれるたび観衆からブーイングが起きた。自分の見ているものが何なのかわかっていなかったからだ。彼らが望んでいたのは酒場の喧嘩だったのだ」
「UFCはファンを教育して見る目を向上させる努力をおざなりにしたまま、試合を短いラウンドに封じ込め、本来グラウンドで戦っているはずの選手を早く立ち上がらせるなど、日和見的にルールを変更していった〔第一回大会では一ラウンド五分(ラウンド制限なし)だったが、たとえば六年後のUFC21ではタイトル戦は五分五ラウンド、ノンタイトル戦は五分三ラウンド〕」
byヒクソン・グレイシー