「私は生まれてからずっと極度の負けず嫌いだった。競泳でライバルに負けたら、次の日もその次の日もプールに戻って練習した。借りを返すチャンスをつかむまで、その負けがずっと頭を離れない」
「柔術の試合で最後に負けたのは十四歳のオレンジ帯のときで、父が若い子たちを連れていった小さな大会だった。昨日のことのように覚えている。試合がはじまりグラウンドに移行したとき、相手の運動能力の高さにびっくりした」
「何が何やらわからないうちに背中に乗られて首を絞められていた。仕方なくタップし、そんな自分が腹立たしくて、かつてない厳しいトレーニングに着手した。気の毒なことに、その子は私の標的になってしまった」
「数ヶ月後、また別の大会で戦った。こんどは勝ったが判定勝ちで、いっそう腹が立ち、次戦へのやる気を掻き立てられ、さらなる猛稽古に励んだ。四、五ヶ月後、ふたりはともに緑帯を巻いて三たび相まみえた」
「試合がはじまると、彼は私の腰に足をかけ、よどみない動きでアームロックにとらえた。足で顔を押さえられて腕を伸ばされ、完全に肘を極められた。靱帯と腱がミチッと音をたてたが、降参しなかった」
「なんとか腕をほどいてマウントを取り、首を絞めはじめた。『タップするな、この野郎!タップするな!』と私は言いつづけた。相手はタップし、二度と私に挑んでこなかった」
byヒクソン・グレイシー