「九五年、VTJ95の二、三週間前に日本に戻り、軽井沢にある中村の山小屋へ向かった。大会前のルーティンは前年と同じだ。ハードなトレーニングは積んできた。最大の関心は怪我や病気を避けながら日本の環境になじむことにあった」
「このころにはもう長野県を魂の故郷のように感じていた。日本で過ごすほどに、この国が好きになった。ごく単純に思えることでも、日本人はきわめて細かな部分まで注意を払う。その点に目をみはらされた」
「塀の立て方、庭に植物を植える方法、蕎麦の実を麺に変える方法。戦いへの取り組み方にも美学があった。名誉や尊厳、敬意といった価値観を守るだけではない。武器や鎧や面などもすべて、細心の注意を払って美しくつくられていた」
「何百年も前から伝わる日本刀はいまなお歴史上もっとも精巧な刃物と言えるだろう。山に入ると簡単なルーティンに取りかかり、山を去るころには頭から余計なものが取り払われ、心が研ぎ澄まされていた」
「今回のトーナメント出場者はレスラーと打撃系が入り交じり、その中にはUFCでホイスの耳に噛みついたオランダのキックボクサー、ジェラルド・ゴルドーの名もあった。このオランダ人が凶暴で、フェアな戦いや名誉ある戦いに何の関心もないことはわかっていた」
「レフェリーが見てなければ目を突いたり噛みついたりしてくるだろう。この男と当たればきれいな戦いにはなるまい。したがって、時間とエネルギーを無駄にする気はなかった」
byヒクソン・グレイシー