「しかし、私の次の試合の相手はケアーではなかった。日本のプロモーターは人気の日本人プロレスラー高田伸彦との対戦を望んでいた。舞台は格闘技イベント〈PRIDE 1〉のメインイベント。このあらたな興行は、のちにUFCから買収されることになるまで世界の総合格闘技界で最高の舞台だった」
「私もPRIDEの関係者と共にルールづくりに携わったため、UFCとは異なり、ここでのルールはファンではなくファイター側に立って考案された。私はレフェリーからグラウンド状態の選手たちを恣意的に立ち上がらせる権限を奪いたかった。契約が交わされ、開催の日が九七年十月十一日に決まると、私は本格的なトレーニングを開始した」
「ウォーミングアップに高級住宅地パシフィック・パリセーズからサンタモニカまで、よく自転車で走った。ある日、帰宅の途中、海に飛び込んで体のほてりを冷まそうとウィル・ロジャース・ステート・ビーチに立ち寄った。水際まで自転車を押していき、靴を脱いでいると、砂の上に白いものが突き出ていた。石か貝かはわからなかったが、心惹かれて掘り出した」
「それは象の頭と人間の手足を持つ、小さな木の彫像だった。なんんとなく見覚えがある気がしたし、なぜか前向きなエネルギーを感じた。太陽や海のエネルギーに惹かれるのと同じだ。ポケットに入れて家に持ち帰った。家に帰ると、裏庭にそれを納める小さな家をつくらなくてはいけないような気がした。まず木の床を用意し、次に枠を組み立てて、椰子の葉で葺いた」
「出来栄えに満足したところで像を納めた。私は運や偶然を信じない。私にとってはすべてが兆しで、それは明るいか暗いかのどちらかだ。この世には自分より大きな力がはたらいていることを受け入れ、人生に超自然な手がかりを探す。たとえば庭に鷹の羽根が落ちていたら、それは天の恵みで、いい兆候と考える」
byヒクソン・グレイシー