「髙田戦後、相撲部屋を支援するヤクザの親分から食事に誘われた。私に興味を持ったのだ。二十世紀の日本では時代遅れになった価値観を、なぜブラジル人が体現しているのかと。私も好奇心旺盛だったし、日本でヤクザの持つ力には目をみはらせた」
「繁華街のど真ん中に彼らが車を止めても、警察は何も言わないのだ〈フォーシーズンホテル〉の前にメルセデスのセダンが停止し、大柄な運転手が降りてきて、キムと私のために後部ドアを、ホクソンのために助手席のドアを開けた」
「車が走りだしホテルを出ていこうとしたとき、ホクソンは運転手の二本の指の一部が欠損していることに気づき、どうしたのかと訊いた。運転手はいかめしい顔でホクソンの顔を見、『失敗をやらかしてね』とだけ答えた」
「夕食の席で、ヤクザの親分が嵌めていた美しいダイヤのイヤリングをキムが褒めると、彼は私にこう言った。『グレイシーさん、差し支えなければ、奥様にさしあげたい』私が礼を言い、かまわない旨を伝えると、彼はキムにダイヤを渡した」
「帰り際にも、三百五十年前に鍛えられたという日本刀をプレゼントされた。その夜のことでいちばん覚えているのは、親分のお抱えシェフがつくってくれた天ぷらだ。初めて味わう旨さだった」
byヒクソン・グレイシー