「長男ホクソンは十七歳になり、柔術に打ち込んで次世代最高のグレイシーになる目標に没頭していた。私と同じくホクソンも学校にはまったく興味がなく、時間のほとんどを道場での稽古と指導に費やしていた」
「私の子に生まれたせいで私の名声と一族の名の両方に恥じない人間にならなければいけない点が、気がかりではあった。年齢を重ねるにつれて無鉄砲になり、どんな挑戦も受け、誰とでも戦って実力を証明しようとしていた点も」
「危険を顧みない行動がエスカレートしてきて、このままでは何かよくないことが起こるのではないかと心配だった。カルバン・クラインのモデルもしていて、撮影中に家の屋根からプールへ飛び込んで命を落としかけた」
「また、招待されていないパーティーに参加したくなったときは、シャツを脱いで巨体の警備員に歩み寄り、『あんたと戦って勝ったら、入れてくれるか?』と訊いた。警備員は呆気にとられ、戦わずに入れてくれた。柔術を教え、モデルをして自分でお金を稼いでいたから、束縛するわけにもいかない。子どもの行く末は親が制御できるものではないと心得、受け入れるしかない」
「種をまき、精一杯育てはするが、ある時点で手放さなくてはならない。どんなに知識や愛情、お金、助言をあたえても、自分の翼が強くなれば飛び立っていく。自力で人生を切り開いていく。こうなってほしいと思う姿があっても、父親は子のあるがままを受け入れるしかないのだ」
byヒクソン・グレイシー