「日本のファンはまだ私を応援してくれていたが、プロモーターは私に勝てる日本人ファイターを見つけようと意を決していた。ただ、日本人選手が相手でも多くのファンが応援してくれたのは、私が自分たちの価値観を体現していると感じていたからだ」
「日本のファンとの関係は国籍を超えていた。生きた参考書だったからだ。日本人とこういう絆を結べたことは無上の喜びだったが、プロモーターの思惑はちがった。ホイラーの試合後、キムが私の次戦の条件交渉を行い、私は契約書にサインした」
「緊張をはらむ交渉を重ねた末に、私が勝った場合百五十万ドルが支払われることで合意を見た。プロモーターが戦わせたかったのは桜庭のような職人タイプではなく、MMA最大のスター船木誠勝だった」
「髙田と異なり、船木はきわめて経験豊富なファイターで、ケン・シャムロック、フランク・シャムロック、バス・ルッテンらMMA黎明期の大物たちを倒してきた。私より十最高若く二〇キロ以上重い船木は一介のプロレスラーではない。プロモーターは私を倒せる可能性がもっとも高い日本人選手を選んだのだ」
「のちに船木は、この試合を打診されたとき決闘になると思った、と語っている。伝統的なサムライにとって決闘の負けは死を意味する。私と同じく、船木も絶対タップしないだろう」
byヒクソン・グレイシー