「自分と家族を立て直し、息子を失った悲しみを乗り越えるのに、五年の歳月を要した。理性や論理の側面以上に、感情と心の側面を立ち直らせる必要があった」
「あの経験をいま振り返れば、自分の一部が死に、命がいかに貴重で儚いかを思い知ることで、私は別人に生まれ変わったのだ。悲嘆と再建に費やした何年かでもういちど幸せになる理由を探し、それは三つ見つかった。子どもと家族と柔術だ」
「心については、いつも自分で正直であろうと努めている。居心地のいい家、すばらしい家族と偉大な友人、熱心な生徒、経営状態の良好な道場などが身近にあり、新しいトラックの上にはサーフボードが取り付けてあっても、あのころの私はいっこうに楽しくなく、心に湧き上がるものがなかった」
「ある朝、誰もいない大きな自宅で目を覚まし、『ここで私は何をしているのだろう?』ど自問した。ホクソンを亡くしたあと、キムと協力して危機対応に努め三人の子を育ててきた。みな力強い翼を生やし、それぞれの方向へ飛び立っていった。カウアンはイタリアで暮らし、クロンは道場を構え、カウリンは大学に通っていた」
「彼らがこの悲劇を乗り越えていけるよう、そればかりに目を向けていたため、私は自分のことに気が回らず、生きてきたというよりただ生き長らえていただけだった。キムもやはりこの危機に対処するので精一杯だった。幸せの形はつねに変化する」
byヒクソン・グレイシー