「私では柔術界を統合できない。その事実に直面したあと、自分に備わった最大の価値は知識と経験であることに改めて気づいた。そしてビジョンの変更に着手した。政治的内紛に関わるより、人の役に立ちたいと思ったからだ」
「なにより、建設的でみんなにとって有益なこと、自分が誇りに思えることを推進したかった。いったん奉仕への献身を決意すると、物事が自然と収まるべきところに収まりはじめた。私自身のライフサイクルと軌を一にしていたからだ」
「六十歳が近づくにつれ、長年にわたる激しい身体消耗のツケが回ってきた。腰と首の椎間板ヘルニア、肩の痛みに加え、股関節がすっかり摩耗していて人工股関節への取り替えが必要になった。何事もないような顔で痛みをこらえてはいたが、柔術の練習はおろか、歩くことさえ難しくなってきた」
「人工股関節への置換手術を受けたあとはリハビリの過程を受け入れ、理学療法にフルタイムで取り組んだ。年齢の割には回復は早く、時を移さずマットに戻ることができた」
「医者や理学療法士のおかげもあるだろうが、生まれてからずっと武術を修練してきたなかで身につけた心構えや習慣が功を奏したにちがいない。この経験を通して私は、柔術をアスリートや格闘家だけでなく、あらゆる人が利用しやすいものにしなければいけないと思った」
byヒクソン・グレイシー