「それまで私の生徒は一流のアスリートがほとんどだった。食物連鎖の頂点に立つ、槍の切っ先のような人たちだ。しかし、みずから老化のプロセスを経たおかげで気がついたのだ」
「グレイシー柔術はもともと体格に恵まれず、運動神経に劣る、自信を持てない初心者のために考案されたはずだ。それなのに、いまでは柔術道場に入門して練習をはじめることがどれだけハードルが高いものになっていることか」
「カリフラワーのように耳がつぶれ、絶え間ない痛みに耐え、大男が臭い道着で顔に覆いかぶさってくるーーーそんなことが柔術を学ぶのに必要な前提であってはならない。かつて私の父は、個人レッスンを四十回受けさせたうえで誰にでも開放されているオープンクラスに参加させた」
「柔術では、戦い方を教えることと同じぐらい生徒の自信を高めることが大切だとエリオは考えていた。今日の生徒が柔術を学ぼうとするときに遭遇する挫折や怪我やエゴは、多くの人を柔術から遠ざけてしまうものでしかない。本来柔術をもっとも必要としている人、つまり弱くて自信のない人を排除してしまっては本末転倒だ」
「私のいまの目標は、マットの内外で人に自信を持たせられるような柔術を創出することだ。緊張している人にそれまでなかったくつろぎを感じさせたら、精神科医や薬にはできない形で内面から人を変えることができる」
byヒクソン・グレイシー