「科学技術がもたらした最悪の副作用は、人と人との直接交流が減少したことだ。食べ物、娯楽、友情、セックスなど、欲しいもののほとんどは画面を通して手に入る。これにより、直接顔を合わせて話すことに多くの人が恐怖を感じるようにさえなった」
「世の中には画面上で経験できないすばらしいことがたくさんある。冷たい川に飛び込んだり、大きな波に乗ったり、雨の中を歩いたりすることはほんの一例にすぎない。さらにまずいことに、現在ではソーシャルメディアという武器を持った臆病者たちが、サイバー空間の陰に身をひそめたまま、面と向かっては絶対に言えないことを放言できるようになった」
「ソーシャルメディアの発展で『他人を侮辱しても殴られずにすむようになった』と言ったのはマイク・タイソンだが、じつに言い得て妙だ。私はいま、忍耐や希望、戦略、感情の制御、呼吸法などを教えるツールとして、柔術を活用している。どれも衝突や競争をともなわない稽古だ」
「だから、柔術をいちばん必要としている人たちがこの武術の目に見える側面と見えない側面の両方を学ぶことができる。それも、日常生活に役に立つ形で。柔術の動きやテクニックのすべてを、競争する環境ではなく助け合う環境で学び練習する方法を開発したのだ」
「ベースやタイミング、体重の使い方、接点、圧力など、柔術でもっとも大切な目に見えない側面を、これにより大きなストレスをあたえることなく教えることができる。このタイプのクラスでは初心者どうしがパンチをブロックし合ったり、腰投げをかけ合ったりできる。トレーニングパートナーは戦う相手ではなく、あなたを助けてくれる存在なのだ」
byヒクソン・グレイシー