「十三歳になるまでの父は体が弱く、運動を禁止されていた。走っただけで倒れてしまうほどだった。ところが、とんでもなく気が強かった」
「いわゆる″男の中の男〟だ。誰かにじろじろ見られれば、『何だ!』と叫んだ。どんな挑戦も喜んで受けた。ひるむことなどなかった。それなのに体が小鳥のように弱かったのだ」
「そういう両極端な面を持った男が、格闘技に出会った。誰とでも対等な関係になれる。それからの父は、まったく新しい人生を歩み始めた」
「『体が強くなっても、ちょっとした技術と、てこの原理があれば、誰にも負けないほど強くなれる』。そう信じ、まるで何かに取りつかれたかのように、新しい技を身につけ、練習し、試合をすることだけを繰り返した」
「それがグレイシー柔術の原点になった。われわれ一族は、そんな父の背中を追いかけてきた」
byヒクソン・グレイシー