「こうしてわれわれは、実戦で技を磨いた。ところが、命がけの闘いをする必要のなくなったその他の世界では、格闘技の形式は、むしろオリンピックやトーナメント、道場での試合に適したものへと移行していった」
「そこで私の兄はUFCを考案した。この大会は、一九九三年にアメリカで初めて実施されて以来、今では大きなイベントに成長している。これが格闘技の世界を変えた」
「それまでは、ボクシング、キックボクシング、柔道、空手と、それぞれに強い選手がいたが、他のジャンルの選手と闘うことのできる場はなかったからだ」
「兄は、試合会場をつくって、誰でも、何の選手でも構わないから、二人でそこに入って闘わないかと提案した。入るのは二人で、出るのは一人。どちらかが勝つまでやる。もちろん、たいていの人がまず疑問に思った」
「『でも、ルールは?』『ルールはない』『時間制限は?』『無制限だ』『重量クラスは?』『ない』『リングに上がったら、何をしてもいい』。そして、その試合を見た世界中の人々は、息を呑んで驚いた」
「弱そうに見える細い体の男たちが、レスリング、柔道、ロシアレスリングのサンボなど、各界を代表する強そうな巨漢ファイターたちを次々と倒したのだ。『すごい、これは何だ?』という声が上がり、グレイシー柔術を知る人は少しずつ増えていった」
byヒクソン・グレイシー