「息子は、十八歳でこの世を去った。そして私は自分を見失った。それは長い人生の中の一瞬、ほんの一ヶ月ほどの短い間のことで、自分でも何が起こったのか分からなかった。たとえばの話だが、息子や母親など、身内を亡くしたばかりの人が私ん訪ねてきたら、もちろん私はその人を抱きしめて、こう言っただろう」
「『本当に気の毒なことだった。でも気をしっかり持つんだ。こういうことは、誰にでも起こることだ。それでも生きていくしかない。がんばってくれ。本当に気の毒なことだった』。大切な誰かを亡くした人に対して、私は心からそう思っていた」
「ところが、逆の立場になってみると、苦しみの中に沈み込むしかないように思えた。腕を失った人が、何もなかったふりをすることはできないのと同じだ。二度とボールを投げることはできない。腕を失えば人生は変わってしまい、二度と普通の暮らしはできなくなる」
「前向きに考えることなどできない。そんなときは、失ったことを感じるしかない。自分を押し殺さず、苦しみをかみしめる。それはまるで、足を鎖で縛られて、大きな石につながれ、船から放り出されたような感じだ。深く沈んでいく。そして底まで沈んだら選択しなくてはいけない」
「水面へ浮かび上がりたいのか、一生そのまま沈んでいたいのか。沈んだままでいれば、惨めな気持ちでいようと、酒におぼれようと、ドラッグに走ろうと、正しいことをしているように思えるだろう。自分の人生を終わりにすることさえ、正しいことだと感じられるだろう。弱い人間は、ずっとそこにいることになる」
byヒクソン・グレイシー