「何よりも重要なのは心の持ち方だ。さらに、現状を見きわめる力と強さがなければ、何かを変えることはできない。それが悲しみから抜け出すためでも、同じことだ。それらは、運で決まるものではない。心の持ち方が間違っていれば、十年前から抱えている弱点にまだ悩まされていることだろう」
「十年前に失敗した事業のせいで、今も自分を負け犬だと思い、他のことに挑戦するのを怖がっていることだろう。戦士なら、たとえ片腕を失っても戦士であり続けられる。何かできることを探す。もう一度立ち上がり、何度でも、サッカーをしたりピアノを弾いたり、何度でも何かを始めるだろう」
「強い精神力があれば、何が起こっても一生幸せを求めて生きることが絶対に可能だと私は思う。まったくの真実だ。自分次第で、現実は変えられる。逆に、自分を強いと思えないというだけの理由で、実際に弱い人間になってしまうこともあるほどだ。最近、父(エリオ・グレイシー)が九十五歳でこの世を去った」
「しかし父は直前まで、自分を老人だとは思っていなかった。話すときも考えるときも自分らしさを失わなかった。父の農園に子供をつれて行くと、父はまずこう言った。『道着を持ってきたか?道場へ行って練習だ』。もちろんその頃には、父はずいぶん体が弱くなっていたので、勝負をすれば完敗したはずだ」
「それでも、自分の柔術を教えてくれた。私たちに技を伝えたいという気迫はどこまでも強かった。驚異的な精神力だ。それは肉体を超えたものだった。幸せを本当に追求するという、心のあり方を映したものでもあった。私は自信を持って言う。父は死ぬまで、本当に幸せな人だったと」
byヒクソン・グレイシー