「試合当日、私は自分に言い聞かせた。『ヒクソン、お前には思い通りになる強力な技があるじゃないか。うまく使えば、必ず結果が出せる』。試合が始まってすぐ、膝を使うチャンスがやってきた」
「実は今でもそのときの傷跡が残っている。相手が近づいてきたとき、私は少し下がって力いっぱい顔面に膝蹴りを入れた。当たった瞬間、相手が気絶するだろうと思うほどの衝撃だった」
「ところが敵はあっさり体勢を立て直すと、歯を一本吐き出して、もう一度向かってきたのだ。『くそ、これは予想外だ』。さらに八分間闘い続け、第一ラウンド終了のベルが鳴ったとき、私にはもう体力が残っていなかった」
「すっかり消耗しきっていた。コーナーへ行き、父に言った。『父さん、もうだめだ。試合を続けるなんて無理だ』。すると父は『そんなことはない。あいつのほうが参っているじゃないか。もう一度行って、やっつけて来い』と言う」
「私は断ろうとした。『父さん、嘘じゃないんだ。くたくたで、もうだめだ』。兄はバケツに入った冷水をあたまから浴びせ、リングに戻れと繰り返し叫ぶ。それは確かに人生最悪の体験だった」
byヒクソン・グレイシー