「体重はとりたてて重要な要素ではないし、強靭な体も必要ない。力や体格はあまり関係なく、むしろ正確なタイミング、安全に試合を進めること、反動を利用することが求められる」

「反動はどんなポジションにいても生まれるから、重要になるのは、正解な動きと、相手の心と技を感じることだ。動きを予測して練習したとおりの反応をするだけでなく、相手と気持ちを通じ合わせなくてはならない」

「それには練習も反射力も関係なく可能性を感じることだけだ。これは柔術で勝つために重要な要素だ。伝統的な柔術では、相手がギブアップしないと勝てないが、現在の試合では、ポイント制が導入され、ときにはギブアップに持ち込めるほどの時間がない場合もある」

「その場合は、コントロールとポジショニングに優れているほうが有利だ。それでポイントを稼いでおけば、制限時間がきてポイント差で勝つこともあるだろう。しかし、私のスクールでは制限時間がない。だから、相手の動きを感じる感覚を高めることができる。疲れを乗り越える方法や、守りの技術が身につく」

「実はそれが、深いところで困難を乗り越える能力を伸ばすことにつながるのだ。試合中、床に押さえられて、かなり長く息を止められ、フットロックをかけられても、まだ勝つ可能性がある。もし柔道ならそんなことは起こらない」

「柔道をやるなら、運動能力を高めることだ。試合が長時間におよぶことなどないし、膠着状態になると、立ち姿勢に戻って再開するというルールもある、完全なスポーツだからだ。そういう意味では、柔道はむしろ、空手などに近いといえる」
byヒクソン・グレイシー