「言葉では説明できないが、その体験は私にとって何か大きな効果があった。それからというもの、自分の教室でもどこでも、たとえわずかな時間にでも、同じ状態を再現して無を感じることができるようになった」

「たとえば、柔術のクラスが終わったあと、私が事務作業をしていると、誰かがドアを開けて『先生、元気?』と入ってきて、そばで話を始める」

「その人が話していることは分かっても、内容が耳に入らず、それが誰なのかも分からない。気づいたのは、声がすることと、人がいることだけで、集中力は少しもとぎれることはない」

「十分か十五分して彼は帰っていった。自分の作業が終わるころにようやく『誰か来たような気がする…… 』と思っただけだった」

「自分を無にすることができるようになった私は、この何も考えない状態に慣れていった」
byヒクソン・グレイシー