じっと待つしかなかった


「観客が叫ぶ中、船木は私を蹴り続けた。目にダメージを受けたことを知られてはならない。だからわざと目をかばわなかった。しかし、見えない。じっと待つしかなかった」

「ずいぶん後になってその試合を録画で見ると、四十秒間も何もしていない。私は蹴られながら転がっているネコのようだった。弟は戸惑っていた。『どうした、ヒクソン?立てよ!』」

「しかし弟にケガをしたと言うわけにはいかなかった。待つしかなかった。船木は、私を攻撃しながら考えていたに違いない。『混乱しているな』とか『怖がっているな』とか『疲れてきたな』とか『もうこっちのものだ』というようなことを」

「船木はただ蹴るばかりだ。一方私は、時間稼ぎが必要だったので、そのままの姿勢をやめようとは考えなかった。ただひたすら我慢して待ち続けた」

「四十秒が過ぎたころ、片目はまだ見えなかったが、大動脈の神経が回復して、もう一方の目が焦点を結び始めた。さあ、ここからだ」
byヒクソン・グレイシー

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