私は正しいことをしていると思っていた

「子供時代、私には同じ年頃の兄弟がいなかった。家がコパカバーナ・ビーチの前にあったので、一人でよく家の前や海岸で遊んでいた。七、八歳の頃のことだ。そんなある日、私は身なりの粗末な少年に出会った」

「とても貧しい子供の多くは、一日のほとんどをリオの路上で過ごし、何週間も道端に寝泊まりしている。母親が無関心だったのかもしれないし、あるいは両親が亡くなったり逃げてしまったのかもしれない。そういう『ストリートキッズ』があちこちにいて小銭を無心していた」

「私が会ったのもそんな少年の一人で、一緒に遊んでいるうちに仲良くなったのだ。昼食の時間が近づいてきたので私は言った。『うちに来て一緒に食べようよ』。私には、まだ物事がよく分かっていなかった。その子を連れて家に帰ると、母は少し驚いたが、ともかく食事を出してくれた」

「ただ、学校の友達を連れてきたときとは違って何だか様子が変だ。まるでその少年が、よその星から来たかのような雰囲気だった。後になって気づいたことだか、それは私にとって重要な体験だった。私は正しいことをしていると思っていた。友達と楽しく過ごしているつもりだった」

「しかし周りはそうは思わなかった。彼には私の友達でいる資格や彼にはそこにいる権利すらないかのように接するのだ。おかしいと思った。学校の友達と同じじゃないか。一緒にいてもいいはずだ。しかし、その少年は昼食を食べて出ていき、その後二度と会うことはなかった」
byヒクソン・グレイシー


