感謝するべき特別なことに変わったのだった

「私は砂浜で、自分と同じぐらいの、そう若くはない男たちの隣に座って、リンゴやクラッカーを食べていた。それぞれ家から持ってきたランチを食べながら、波のことなどを話しているうち、家族の話になった。『子供はいる?』と聞かれたので『ああ、いるよ』と答えた」

「息子の死については何も話さず、娘が二人に息子が一人いるのだと答えた。『そうかい、僕にも三人子どもがいるんだ』。彼の娘は南部のリーグでバレーボールをしているということだった」

「私も二人の娘の話をし、それから当時十三、四歳だったクロンの話になった。そのとき突然彼が言った。『僕にも息子がいるんだが、病気でね、もう二度と元気になることはないかもしれないんだ』」

「そのときふいに、長男が十八歳でこの世を去ったことを、死ぬ日まで健康であったこと、最後までエネルギーにあふれて生きていたことを、そう悪くはなかったのかもしれないと感じて、この男が気の毒になった」

「彼はこれからも、治る見込みのない病気にかかった男の子を心配し続けて生きていかなくてはならない。何の反応も返ってこない子供を持つというのは、どんなに辛いことだろうか。私は息子が最後まで元気だったことに感謝した」

「心の中で、『息子を失った』という悲しみが『十八年の充実した時間を過ごさせた』というエネルギーとなり、感謝するべき特別なことに変わったのだった」
byヒクソン・グレイシー


