「柔術には、有利なポジションが三つある。一つめは、相手が自分の上に乗っているときだ。たとえば私は、下になると足で相手の体を挟む。これを『ガードポジション』と呼ぶ。これは私にとって有利な体勢だ。たとえ下にいても、いろいろ可能性がある。足でチョークを決められるかもしれないし、腕十字を狙えるかもしれないし、あるいは背中を押さえることもできる」
「逆に相手は、何の攻撃もできず、攻撃をするには、ガードを切って、サイドポジションかマウントポジションに移らなくてはならない。私に足で挟まれた状態では、基本的に私をギブアップさせたり追い詰めたりする方法はほとんどない。なぜなら私は足で距離をコントロールできるだけでなく、向きを変えられるからだ。このように相手にとって圧倒的に苦しい体勢なのだ」
「二つ目の有利なポジションは、私が背後から相手の胴体に足をフックした状態だ。相手の足は下がり、私ならフックしたままチョークを仕掛けるだろう。このポジションからも、チョークや腕十字を狙える。三つ目の有利なポジションは、私が相手に馬乗りになったマウントポジションだ」
「チョークも腕十字も狙えるし、実戦では打撃も可能だ。基本的には相手を完全に支配できる。私はこの三つのポジションのことなら、何でも知っている。この三つのポジションにいれば、私は絶対に安全だ。別のポジションを取られたら、すぐに守りの体勢に入って、この有利なポジションを取り戻す。サイドポジションやマウントを取られても、攻撃をかわす方法を見つけて体勢を立て直し、最後には反撃に出る」
「つまり、まず良いポジションを取り、それから相手をギブアップさせるのだ。付け加えると、これはどんな人にとっても同じように有効で、この三つのポジションさえ取れれば、相手をギブアップさせることができるだろう。あとは、どのぐらいプレッシャーをかける能力があるか、どれぐらい相手をうまく動かせるかということが重要になる」
「まさに目に見えない技術だ。ただマウントしただけで勝てるわけではない。その状態から、相手の腕を極められるとも、打撃を加えられるとも限らないのだ。力まかせに氷を砕くように、ただ感情をぶつけて攻撃していては、完全にエネルギーの無駄づかいになってしまい、それでは相手を窮地に立たせることはできない」
byヒクソン・グレイシー