「グレイシー柔術は物理学にとってのアルバート・アインシュタインに匹敵する存在だった。ガードと呼ばれる防御と攻撃を兼ねたポジションを大きく進化させ、背中をつけたまま相手を股に挟んで戦うことで、格闘技を大きく進化させた。相手をコントロールし、パンチから身を守るだけでなく、絞め技や関節技で降参〔サブミット〕させることができた。

このポジションはもともと柔道にも存在はしたが、父は体格に恵まれず、バーリトゥードは暴力性が高かったため、そこに改良と近代化をほどこしたのだ。

小柄なエリオは”知性で力を制する″と謳う格闘技には打ってつけの広告塔だった。グレイシー柔術の初期には、リオのビーチにいる痩せた男と魅力的な女性を組み合わせた広告宣伝が呼び物になった。

筋骨隆々の乱暴者が痩せた男を叩きのめし、女の子と去っていく。次のシーンでは、痩せた男がグレイシー柔術の道場に入門して柔術の訓練を受け、何週間後かに同じビーチへ戻ってきて乱暴者と対決する。

こんどは筋肉男のパンチをさえぎり、地面に投げつけ、腕を折って、女の子と去っていく。もういまでは、こうした広告をつくる必要もなくなったが」
byヒクソン・グレイシー