「カーウソンは一族の王者を座を退いたあと、私たち第二世代のなかで初めて父と決別したグレイシーだった。一九六四年自分の道場を開き、エリオとはちがってグループ指導にも力を入れ、優秀なファイターがいてその生徒にグレイシーの看板を背負って戦いの場へ乗り込む気概があれば、無料で教えることもあった」
「カーウソンの寛大さは伝説的で、そのため今日でも多くのファイターが彼に忠誠心と感謝の念を抱いている。いとこの道場は父の道場と真逆だった。みんなが汚い道着を着ていて、中に入ると臭いに圧倒された。カーウソンの生徒は積極果敢に攻撃するが、力に頼りすぎるところがあった」
「カーウソンの技術は洗練されたものではなかったが、彼の抱える生徒たちには合っていたようだ。その教え方も殺伐としていた。父の指導は『よし、落ち着け、ベースを維持して、うまくエスケープしろ』といった感じだ」
「同じ状況でカーウソンは『そのクソ頭を抜いて、あいつを叩きのめせ!』と叫ぶ。彼にとって、グレイシー柔術で大事なのは腕力に対する頭脳の勝利でも、正確な技術でも、一族の食事法でもなく、心臓が口から飛び出るまで戦うことだった」
「そんな環境の稽古に耐えられたら、競技大会などオフィスで過ごす一日のようなものだ」
byヒクソン・グレイシー