「海は自分を試して限界を押し広げることのできる場所だと実感した。海は強すぎるから、戦っても無駄だ。海に合わせて流動し、冷静さを失わず、波の強さや大きさをはじめ複雑な状況に分けて入っていく必要がある」
あるいはそこから抜け出さなくてはならない。ある嵐の日に私はビーチで波を見ていた。まわりには誰もいない。手に負えそうにないくらい風が強かったからだ。そのとき、長髪の痩せた少年が水際で赤いサーフボードを持っていることに気づいた」
「ホーウスの友人ぺぺだ。彼はブラジルで初めて大波を乗りこなしたひとりだった。私が腰を下ろしたまま見ていると、彼は荒海へ漕ぎ出し、事もなげに、軽やかに、楽々と波に乗った。私より年長だったが、それほど年が離れていたわけではない」
「彼にあんなことができるなら自分にもできるはずだ。それ以来、私はサーフィンの黒帯を取るミッションに邁進した。当時のブラジルではサーフィンは新しいスポーツだった。一九七七年にリオで初めてプロの大会が開かれたときは大きな話題になった」
「うちの兄弟はみなサーフィンをしていたので、ハワイやオーストラリア、カリフォルニアから来たあこがれのサーファーたちを見て興奮したものだ」
byヒクソン・グレイシー