トラスト柔術アカデミー鹿児島・出水鶴柔術♪
「会場は収容人員八千の東京ベイNKホール。初戦の相手は西良典という日本の総合格闘家で、ベースにあるのは柔道だった。たいていの試合にはチャンスの窓が開く瞬間があり、それを見極めてつかみ取らななければいけない」
「この試合では、ゴングが鳴る前にそのチャンスが来た。リングに飛び込んだあと西の目をのぞき込み、そのあと彼の態度を見た。炎も、悪意も、攻撃性も感じられない。途方に暮れている感じがした」
「まるで台本を見て演技を思い出そうとしているかのように。ゴングが鳴ると、戦う構えに入るというより公園を横切るような感じで西に歩み寄った。瞬時に相手の混乱を感知した」
「相手とキスを交わしにきたのか、それとも殴りにきたのか。相手が気づいたときには間合いを詰めていた。西がパンチをくり出そうとしても間に合わない。クリンチに持ち込んでマットに倒し、上になった」
「グラウンドに持ち込まれたことで西の台本は消えてなくなり、完全に方向を見失っていた。マウント状態から何度かパンチを入れると、いやがって背中を向けたので、そこでチョークを極め、試合は三分足らずで終わった」
byヒクソン・グレイシー