「とんな人でもやっておかなくてはいけないのは、自分自身を今より深く知ることだ。では、どうすればいいのだろう。ただ待ってるだけでは、誰も答えを教えてはくれない。答えはもともと自分の中にあるのだ。たとえば、素晴らしい本を読むとする」
「すると何かが心に触れ、読み終えるとすぐ、本から学んだことを実践するようになり、やがてそれが自分の一部になる。ところが、同じ本を何度も読んでいるにもかかわらず、何の変化もないという人もいる。何かを悟ることも、特別な知識を吸収することもないまま、前と同じことを続けようとするのだ」
「本を読むのが無駄だという意味ではない。一冊の本からどれだけ大きな影響を受けるか、また、どれだけ人に差をつけるかは、『本人』次第ということだ。そういう意味では、私は誰かに何かを教わったわけではない。信じるものを守り、前へ進んできただけだ」
「われわれ兄弟は同じ柔術を学び、長いあいだ一緒に稽古をしてきた。では、なぜ私が兄弟の誰よりも一歩前に出られたのだろうか?それは私には分からない。ただ、自分の中にある″何か〟のおかげだ。私だけの何かがあったのだ。だから自分自身を知ることがなにより大切だ。それを楽しくやれるのが、柔術だ」
「前にも書いたが、私は道場のマットの上に″住んで〟いて、そこで練習や試合をする人をいつも見ていた。父や兄たちが教えるところを見ていた。教わったことを練習する人々を見ていた。あらゆることをマットの上で目にし、体験した。おもしろかったのは、ひとたびマットの上に上がって、全員が白いウェアを身につけると、誰が誰なのか分からなくなることだ」
「少なくとも、そんなことはどうでもよくなる。サウジアラビアの王子がいるかもしれない。ナイトクラブのドアマンがいるかもしれない。警官、ヤクザ、用心棒がいるかもしれない。しかしそこでは、全員が同じように白い道着を着て帯を巻き、本当の自分を出すしかない」
byヒクソン・グレイシー