
「父の愛馬ムスタングはロイ・ロジャースが映画で乗ったトリッガーに似ているパソフィノ種の種馬だった。ローレンのほかの牝馬たちと草原で暮らしていた。ある日、父はムスタングを牧草地のてっぺんから連れてくるように私に命じた」
「首に手綱をかけて丘を下りようとしたが、私を引きずりだしたので、引っ張るのをやめてまたがった。ムスタングは囲いの出入口が開いたままになっているのを見て、未舗装道路へ駆け出し、幹線道路のほうに向かって疾走をはじめた」
「思いがけない状況を見た父は、私が丘のむこうへ消える直前に、『放すな!』と叫んだ。たてがみをつかんで坂を駆け下りた。ムスタングは馬鹿ではない。幹線道路に近づくと、私が飛び降りられるよう速度を落としてくれた」
「着地して手綱をつかみ、彼を落ち着かせた。それからまたがり直し、牧場のほうへ引き返した。丘を越えたところで父が走ってくるのが見えた。私とムスタングが落ち着いて帰ってくるのを見て、父は『よし!』と叫び、目に浮かんでいた不安の表情が誇りのそれに変わった」
「あの日に通い合った心は、私にとって真の勝利だった。エリオの私への信頼が見当違いでなかったことも証明され、それ以来、父が私に不安を覚えることは二度となくなった。むしろ過信するくらいで、大きな自由をあたえてくれ、私はそれを最大限に活用した」
byヒクソン・グレイシー
