死に直面しても父は冷静だった

「死に直面しても父は冷静だった。私が五歳のとき、父のジープで母が相続した地方の土地の一角を走っていた。こと土地はエリオが管理していて、少し前に支払いをめぐるトラブルがあり、彼が一部住人の水を止めていた」

「とつぜんフォルクスワーゲンのバンが行く手をさえぎり、父がブレーキを踏んで急停止したため、私は車から投げ出されそうになった。ブラジル人議員とその息子と武装した手下たちが飛び出してきて、私たちを取り囲んだ」

「『よくも、うちの水を止めてくれたな』議員が言った。『死んでもらう!』多勢に無勢で武器の数も劣っていたため、エリオは彼らを説得しようとしたが、その途中、最悪の事態を予想して黙り込んだ。ならず者のひとりが父に発砲したが、弾は耳たぶをかすめるほどにとどまった。地面に倒れたエリオの脚を別の男が撃った」

「私は『やめて!やめて!』と叫んだ。しかし彼らは私ん押しのけ、銃の台座で父の顔を殴った。殺す気だったところ、私がいたから思いとどまったのだろう。『この程度か』議員は憎々しげに言った。『おまえくらい、いつでも殺せる。俺たちの邪魔をしたら、命はないぞ!』彼らはバンに戻って走り去り、父は泥の中で血を流していた」

「私は動転していたが、父は落ち着きはらっていた。私を腕に抱え、『心配するな、大丈夫だ』と言った。警察に行ったら殺すと、ならず者たちは脅しをかけていったが、傷の手当てがすむと、エリオはその足で警察へ行き、被害届を出した。その後、議員とは和解が成立した」
byヒクソン・グレイシー


