「柔術の黒帯に加えて法律の学位も取得していたホリオンは、知識で優位に立っているのをいいことに、商取引で強く出すぎることがよくあった。そのため一族のなかには彼を不愉快に思っている者も多かった」
「アメリカのグレイシーをホリオンに統率してほしいというのがエリオの願いだったのが、言うは易し、行うは難しだ。異なる方向へ向かう者が多すぎたし、ホリオンが一族を管理しようとしたことが裏目に出てしまう」
「彼はグレイシー柔術の名称を商標登録し、勝手にその名を使ったら法的に訴えると、柔術の世界でともに育った一族の面々を脅したのだ。それもあって、以後は”ブラジリアン柔術〟という包括的な名称が広まっていく」
「兄が一族の名を誰にでも使わせていたら、我々の武術はいまでもグレイシー柔術と呼ばれていたし、いまよりもっと繁栄していただろう。ホリオンにとっては、さらにまずい状況になってきた」
「いとこのヘンゾのような血の気の多いカリスマ的なグレイシーがアメリカに乗り込んできて、兄の独占状態を脅かすあらたな脅威となったからだ。私はヘンゾとその弟ハウフ、ハイアンを、彼らがまだ幼いころから知っていた。彼らの父カーロス・ホブソン・グレイシーと母ベラが離婚したあと、ヘンゾはハウフとハイアンら多くの子の父親代りになった」
アメリカへやってきたとき彼はすでに、方向性を持たない多くの若いグレイシーや友人らを統率していた。生まれながらのファイターで、危険な状況に怯むことなく集中力を発揮した」
byヒクソン・グレイシー