「ホクソンはリーダーになろうとして過剰に攻撃的になり、自分の力を証明しようとしては無謀な行為に出た。どんな挑戦も受け、誰とでも戦った。トーランスの小学校に入れると、そこの子全員と戦おうとした。月に一度は校長が電話んかけてきて、こう声を荒げる」
「『今日、ホクソンは六人と喧嘩した。バスケットボールのルールを理解せず、ほかの子たちにボールを持たせようとしない』リュックいっぱいにお菓子を詰めて帰ってきたこともあった。落ちていたから拾ってきたと答えたが、盗んできたのはわかっていた。罰しても素行に変化は見られない」
「私はずっと格闘家として生きてきたから、わが身を危険にさらすことは理解できたが、ホクソンのやり方は合理的でなく、知的でもなかった。彼には前からそういうところがあった。幼いころ妹に向かって、『僕はお金持ちになるか、刑務所に入るか、死ぬかのどれかだ』と言った。小さな子がそんなことを言うなんて、まったく想像しがたい」
「彼は磁石のようにトラブルに引き寄せられた。簡単に避けられたはずのトラブルにまで。このバランスの悪さが私を悩ませた。居心地のいい場所から抜け出て、つねに危険な状況に身を置いていたからだ。私が見ていたのは攻撃的な性格をしたグレイシーの子の成長過程ではなく、情緒不安定な生き方をしている子のそれだった。キムが抑えつけようとすると反抗し、挑戦的になった」
「わが子が好戦的なグレイシーになることを望んでいなかったキムと私との間に不和を生み出す原因にもなった。アメリカへの移住を機に、彼らが私とは別の道を歩むことをキムは期待していたのだが、すでに手遅れだった。ホクソンはもう、次世代最強のグレイシーになる使命をみずからに課していた。思慮に欠けてはいても、永遠のファイターだった」
byヒクソン・グレイシー